省エネ促進を背景に電力の地産地消が注目されるなか、2017年4月から1年間、自家消費型の太陽光発電設備高効率化システムの実証試験に取り組んだ日立パワーソリューションズ。近年、固定価格買取制度(FIT)の改正で、太陽光発電による電力の買い取り価格低下などに伴い売電目的の導入は縮小傾向にある一方、補助金制度の対象となる自家消費型太陽光発電の導入ニーズは高まると予測される。「太陽光発電設備高効率化システムの有効性や省エネ効果を検証すること」と佐藤は話す。地球規模の課題であるCO2削減や改正省エネ法で求められる電力使用量削減も追い風になるとみての実施だ。
実証試験では、茨城県日立市にある大みか別館事務所や駐車場の屋上に設置した太陽光発電パネル350枚と、蓄電池、制御システムを組み合わせた。過去の電力使用量や気象データから、1日の電力需要と発電量を予測し、これらのデータを基に蓄電池の充放電や空調・照明などの負荷設備をEMS(エネルギーマネジメントシステム)がきめ細かく制御することで、発電した電力を無駄なく使う。「例えば電気使用量を抑えたいとき、単に空調をオフにするのではなく、利用者になるべく不快感を与えないよう、外気温の影響を受けにくいフロアから段階的に制御するのも他社にはない強みです」と自信を見せる佐藤。また、早朝の発電量が使用電力量を上回ることにも着目。「始業前の早朝に発電して蓄電池に充電しておき、日暮れ後の時間帯に放電するという活用法についても実証できました」。最大3割程度の電力使用量の削減に加え、 CO2の削減も期待できるこのシステムは、1年の試験期間を終えた現在も日々のデータを取得し、EMSの精度を上げている。
電源インフラ事業統括本部
事業開発推進センタ
電源システムグループ
佐藤 正志
導入先が増えるほどCO2削減につながる太陽光発電設備は、オフィスビル、工場、病院の屋上など、さまざまな場所に設置できる。
「現在、屋内型野菜工場への導入が検討されています。人工光を活用する植物工場などにも提案していきたいですね」と佐藤。安定生産を可能にする未来の農業として期待される分野からも地域貢献をめざしていく。「例えば、ビルの所有者に屋上のスペースを借りて太陽光発電設備を設置し、発電した電気を入居者に活用してもらうことも考えています」と、アイデアは尽きない。ビルを利用するすべての人が高い意識を持ち、社会貢献につながるイメージが広がる。
2018年4月、太陽光発電部門は再生可能エネルギーを扱う電源インフラ事業統括本部に加わった。「太陽光や風力発電などを組み合わせ、地域エネルギー供給をスピーディに、提案できるようになりました。風土や環境に適した発電システムを提供しながら、私たちの社会を未来へとつなげていきたいですね」。2人の子を持つ父親の表情が垣間見えた。